衣208「聖書物語」P.34から

衣208「聖書物語」P.34から

ユダヤ人は、長い年月にわたって放浪した。

アブラハムとイサクとヤコブ(イスラエル)の、新しい土地での冒険は、文字のなかった時代に、口伝えで語りつがれる。

 

たしかなのは、三千年前のユダヤ人は羊飼いだったこと、いつも羊のための良い牧草がはえている土地をさがしつづけて、西へ西へと旅したこと。

 

ヤコブが年老いたとき、パレスチナは日照りにみまわれ、ユダヤ人はさらに西のアフリカへむかうことになる。

 

ヤコブには十二人の子どもがいた。

下から二番目のヨセフは、とりわけ父にかわいがられていて、きれいな服を買ってもらった。

 

兄弟はねたましく思っていた。

 

ある朝、ヨセフは、良い夢を見たと兄弟に話す。

 

「ぼくらは、麦をたばねていた。

すると、ぼくの束がまんなかに立った。

兄さんや弟の束は、まわりに輪になって、ぼくの束にむかって穂先をたれておじぎをしていた。そういう夢」

 

兄弟は、前にもましてヨセフがきらいになった。

また夢の話

「天に、星が十一あって、その星と太陽と月がみんな、ぼくにおじぎをする」

 

兄弟は、ヨセフをますます憎むようになる。」

 

ある日、羊を、連れてシケムの野にいたとき、兄弟は、きれいな服をむりやりぬがせて、ヨセフを穴にほうりこんだ。

けれども、死なせる気にならない。

 

それで、兄弟のひとりユダがいう。

 

「ヨセフを売りとばそう。

お父さんには、あいつがライオンかトラに食われたといえばいい」

 

ちょうど香料と没薬を持ってエジプトへむかうミディアン人のラクダの隊商がとおりかかったので、兄弟は、これさいわいと銀二十枚でヨセフを売った。