衣258「聖書物語」P54から

衣258「聖書物語」P54から

 

じつはモーセがいないあいだに、ユダヤ人の宿営地は、まるでエジプトの村のよう

女たちは金のかざりをつかってナイル川流域の人びとがおがんでいた聖なる牝牛ににた偶像をつくり、そのまわりでおどる。

 

もどってきたモーセは、ひどく怒る。

石板を地面にたたきつけて割り、金の子牛象をこわすと、そむいた者どもをほろぼす人を集める。

 

呼びかけに答えたのは、レビ族だけ。

レビ族はもっとも強いユダヤの部族。

レビ族は神を信じないものを殺し、モーセの留守にこのようなことをさせた長老を許さなかった。

ひどくがっかりしたモーセは、うちのめされそうになったが、また、気持ちをふるいたたせる。

人びとには、文字で書かれたおきてが必要。

先祖のことばをうやまうようにさせなければならない。

そうしないと、ユダヤの男と女がひとつの民族としてまとまることはできない。

モーセはそう考えた。

 

モーセはふたたびシナイ山の頂きに立った。

そしてまた二枚の石板を持ってもどる。かれの目はかがやいていた。

 

石板には、前とおなじおきてがきざまれていた。

 

神が、ユダヤ人の行いについてきめられたおきては、つぎのよう。

 

わたしをおいて神があってはならない。

どんな偶像もつくってはならない。

神の名を、むやみにとなえてはならない。

六日はたらいて、七日目は休み、神に祈らなければならない。

父と母をうやまいなさい。

ひとを殺してはいけない。

他人の妻をとってはいけない。女は他人の夫をとってはいけない。

ぬすんではいけない。

隣人にたいする嘘の証言をしてはいけない。

よくばった気持ちで、隣人の家や家畜やそのほか隣人のものをほしがってはいけない。

 

こうして、ユダヤのおきてができた。

つぎに、必要なのは、みんなが集まって祈りをささげる場所。モーセは、幕屋を建てるよう命じる。それが壁が木でできていて、天幕でおおわれている礼拝所。

何十年ものち荒れ野から町住まいにもどってから、れんがと大理石とみかげ石をつかって幕屋をつくった。それが有名なエルサレムの神殿。

 

つぎに、幕屋できめられたとおりに礼拝をつかさどる祭司が必要。

モーセの呼びかけに答えたレビ族から祭司がえらばれた。

 

モーセは、生き残ったユダヤ人の無冠の王となる。

神の命令をいただくために神の前に出るのはモーセだけであり、モーセなきあとは、アロンとその息子、そして孫へとこのつとめがうけつがれる。

 

モーセは、人びとをいくつかのグループにわけて、それぞれ信頼できる長老、つまり「士師」をきめて、争いを解決しなかよく暮らせるように、おさめさせることにした。

 

モーセは宿営地をたたむように命じる。

高い雲の柱が、十戒の石板をおさめた聖なる「契約の箱」の上に立つ。

レビ人が、のちに神殿の中央におかれることになる聖なる箱をかつぎ、七千人の男女と子どもたちが歩きはじめた。

 

またもや、いさかいやヘビだけでなく、ユダヤ人を追いだそうとする敵の攻撃になやまされる旅となる。

ヨルダン川に近づくと、攻撃がひどくなる。モーセは、十二部族の代表に、ようすを見に行かせる。

ブドウの房を持ってもどったヨシュアとユダ族のカレブによれば、エシュコルという谷に乳と蜜の流れる土地があるということ。

この地を手に入れるためには、いまそこに住んでいる人びとと戦わないといけない。

けれどもユダヤ人は、くる日もくる日も歩きつづけ、飢えと暑さと戦いでつかれきっていた。

そして、またもや人びとはモーセにそむいた。

せっかちな人びとは、エジプトに帰ろうといいだし、どなりあったりさけんだり。

はてしないさすらいの日々にうんざり。

モーセはこれをしずめることができない。

ついに、神はお怒りになる。

その声が、幕屋の天井にひびく。

ユダヤ人は、わたしの意志にそむいた。

信仰のうすい罰として、あと四十年のあいだ砂漠をさすらいなさい、と。

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