衣468-1シェールガス革命と言えば魚沼産の米問題を思い出す!
たしか魚沼でシェールガス掘って米が?だったと思うけど、↓には出てこないけど、勉強になります。
技術革新がもたらした「シェールガス革命」 | 魚沼産コシヒカリ無農薬米 通販 魚沼コシヒカリ.com (jugem.jp)
シェールガスのリスク!
日の出の勢いのシェールガスですが、環境汚染リスクの可能性を背負っています。それは水です。先ほど説明しましたように、フラクチャリング技術は水を使って頁岩にフラクチャーを入れますが、その際に大量の水が必要となります。
このフラクチャリング用の水源の確保と同時に、フラクチャリングで利用する水による地下水汚染の可能性が問題になっています。
特に、フラクチャリング用の水には溶剤などの化学物質が含まれていますので、この化学物質が混入した水が地下のシェールガス層から帯水層へ拡散し、飲料水を含む水供給システムを汚染するリスクが指摘されています。
前回連載で紹介しました、ポストBP原油流出事故の新しいエネルギーコスト方程式(図38: 供給コスト + CO2コスト + 環境汚染コスト = エネルギーコスト)をベースに、シェールガスとクリーンエネルギーの正味コストを比較する必要があります。
いずれにしても、今後、世界のシェールガスの開発動向が、天然ガスの価格および相対的なクリーンエネルギーの競争力に影響を与え、クリーンエネルギーへの本格的な移行スピードを左右することは間違いありません。
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2010.11.08(Mon)JBプレス 一尾泰啓
今回は、近年「シェールガス革命」と呼ばれ、脚光を浴びている米国を中心としたシェールガス開発が、なぜ「革命」とまで呼ばれるのか、そして、このシェールガスがクリーンエネルギー産業に与える影響を分析します。
ここ数年、米国を中心に、従来の天然ガスの採掘技術では回収が難しい非在来型天然ガスの一種である、シェールガスの開発が活発化しました。
シェールガスとは?
シェールガスのシェールの語源である頁岩(けつがん)とは、泥土が堆積してできた泥岩のことで、シェールガスとは、この泥岩である頁岩に閉じ込められた天然ガスの呼称です。
それに対して、従来技術で生産されるいわゆる在来型天然ガスは、砂が堆積してできた砂岩の中に埋蔵されています。
シェールガスと在来型の天然ガスの大きな違いは、その埋蔵されている場所である頁岩と砂岩の浸透率の違いによります。浸透率とは、堆積岩中の流体の流れやすさを示し、浸透率が高いということは、ガスが堆積岩中を移動しやすくなり、その分ガスの生産性が高まります。
頁岩の浸透率は、砂岩に比べて非常に低いため、井戸を掘っても十分な生産量が確保できずに、経済性が成り立ちませんでした。これが、シェールガスの存在自体は長年知られていたにもかかわらず、最近まで開発が進まなかった理由です。
シェールガス台頭の理由!
では、なぜ米国において、1990年初頭から一定レベルの生産量で安定推移していたシェールガスが、2005年頃から急速に伸び始め、今後もその生産量の上昇が予測されているのでしょうか?(図39)
その理由の1つが、米国の天然ガス価格の上昇です。米国の井戸元天然ガス価格は、1980年代・1990年代を通じて100万BTU(British Thermal Units――天然ガスの熱量単位)当たり2ドル前後で安定的に推移していました。
しかし、2000年代に入り上昇を続け、2005年には年平均の井戸元ガス価格が100万BTU当たり7ドルを超え、2008年にはほぼ100万BTU当たり8ドルに達しました(図40)。最高値としては100万BTU当たり13ドルを突破しました。
米国の天然ガス価格が上昇したことによって、在来型の天然ガスに比べ生産性が低く、結果的に生産コストが高くなるシェールガスでも、その経済性が一気に高まったのです。
もう1つの大きな理由は、シェールガスの採掘技術の目覚ましい進歩によるガス生産量の増加です。特に、フラクチャリング技術と水平坑井の掘削技術です。フラクチャリング技術とは、水圧によって頁岩を砕き、フラクチャー(割れ目)を入れて浸透率を高める技法です。
水平掘りは、井戸を地面に対して水平に掘削する技術で、従来の垂直に井戸を掘るやり方に比べて、ガス層に触れる面がより広くなりますので、結果的にガスの生産量が増えます。
この天然ガス価格の上昇と採掘技術の進歩という複合的な要素によって、シェールガス開発の経済性が大幅に改善され、生産が急増したのです。
約100年分ある天然ガス!
その結果、何が起きたのでしょうか? 米国の天然ガスの埋蔵量が急増したのです。
米国エネルギー省(Department of Energy: DOE)のまとめたリポート「米国における近代シェールガス開発」(Modern Shale Gas Development in the United States)によると、確認分と未確認ながら技術的に回収可能とされる埋蔵量を加えた米国の天然ガスの総埋蔵量は、1680兆立方フィート(Trillion Cubic Feet: TCF)から2247TCFと見積もられています。
2007年の米国の天然ガスの生産量が19.3TCFでしたので、米国には87年から116年分の天然ガスが埋蔵されていることになります*40。
しかし、つい数年前まで米国では自国の天然ガス供給が需要に追いつかないという見方が市場を支配していました。不足する天然ガスはLNG(Liquefied Natural Gas)の輸入で賄う以外に手段がないとの考えから、多くのLNG受け入れ基地の建設が計画されていたのです。
LNGの輸入から輸出へ!
NGI(Natural Gas Intelligence)によりますと、2006年3月の時点で、米国を中心とした北米市場において稼働していたLNG受け入れ基地の総LNG受け入れ量は1日当たり5.24十億立方フィート(Bcf/d)でした。
当時管轄規制当局から建設許可取得済みの計画中LNG受け入れ基地だけでも、その数は17プロジェクトに上り、これら新設LNG受け入れ基地の総LNG受け入れ量は、既存受け入れ量の約5倍に当たる24.2Bcf/dにも達していました。まさに、新規LNG受け入れ基地の計画ラッシュといった状況だったのです。
しかしながら、その後シェールガスの台頭があり、実際に建設に入ったプロジェクト数は4つ。うち3つのプロジェクトは現在稼働中で、残りの1つも2010年中には稼働を開始する予定になっています。
その一方で、シェールガスによる供給増加に加え、景気後退によるガス需要の減退も相まって米国天然ガス価格は低レベルで推移しています。
一般的にコストの高いLNGは、現状の天然ガス価格レベルでは経済性が厳しいため、当初の予定の通り米国にLNGが輸入されるケースはほとんどなく、LNGがより高値で取引されているアジアやヨーロッパ市場向けに販売されています。
その結果、上述の新設の3つのLNG受け入れ基地は完成したものの、実質ほとんど稼働しておらず、米国エネルギー省(DOE)に対し、輸入したLNGを米国市場で販売するのではなく、再び他国に輸出するためのライセンスや、LNG受け入れ基地そのものをLNG出荷基地に転換する申請を行っています。
事実、LNG出荷基地への転換を申請中のプロジェクトの1つはDOEの許可を取得し、現在、連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission: FERC)の審査を受けています。
つまり、米国の市場プレーヤーは、天然ガスを輸入しなければならないどころか、米国は海外へ輸出するだけ十分な天然ガスが埋蔵されていると考えているのです(ただし、エネルギー安全保障の観点から、米国のLNG輸出には慎重論もあります)。
同様の動きは隣国カナダでもあります。ブリティッシュコロンビア州沿岸の街キティマット(Kitimat)で計画されているLNGプロジェクトは、計画当初はLNGを輸入するLNG受け入れ基地として開発されていました。
しかし、プロジェクト開発会社の言葉を借りると、“天然ガス市場環境の激変”によって、2008年9月にLNGを輸出するLNG出荷基地として開発し直すとの発表があり、計画を180度変更しました*41。カナダにも莫大なシェールガスの埋蔵量があるとされています。
後退する原子力ルネッサンス!
さらにシェールガスの影響はLNGにとどまりません。2010年10月に米国大手電力会社コンステレーション・エナジー(Constellation Energy)が、計画中の新規原子力発電プロジェクトへの政府ローン保証申請の取り下げをDOEに通達しました。
建設費が100億ドル(9000億円)に上るとされるハイリスクな当プロジェクトにとって、政府ローン保証申請の取り下げは、計画の凍結を意味します。
このコンステレーション・エナジーがメリーランド州で計画している原子力プロジェクトは、2010年2月に政府ローン保証が付与されたジョージア州で計画されている大手電力会社サザーン(Southern Co.)に次いで政府ローン保証を獲得して、プロジェクト実現へ大きく前進すると期待されていただけに、今回の発表は市場関係者に驚きとショックをもって迎えられました。
申請取り下げの最大の理由として、コンステレーション・エナジーは、政府の要求するローン保証の申請費用の高騰を挙げていますが、シェールガス開発による天然ガス価格の下落が電力価格を抑え、この傾向が長期的に継続するとの見通しから、原子力発電の経済性の見直しを迫られたことも一因と考えられています。
米国では、スリーマイル島原子力発電所事故以来、30年以上にわたり原子力発電所が新設されていません。
しかし、昨今のエネルギー価格の高騰によるエネルギー安全保障と環境意識の高まりから一気に原子力が注目され、コンステレーション・エナジーのプロジェクトも含め20以上の新規原子力プロジェクトが計画されています。
この久々の新規原子力計画ラッシュは、「原子力ルネッサンス」と形容されていますが、シェールガスはこの米国原子力産業の再生に冷や水を浴びせています。
シェールガスは天然ガス市場にとどまらず、エネルギー産業全体に影響を及ぼしているのです。そして、このシェールガスは米国やカナダといった北米大陸だけではなく、東欧を中心とした欧州諸国や、中国にも豊富に存在することが確認されています。
このシェールガスの台頭によって、ここ数年という短期間に、「天然ガスは意外と豊富にあるんだね」という話になってきたのです。まさに、世界のエネルギー産業に“革命”を巻き起こしているのが、シェールガスなのです。
リリーフピッチャーから先発ピッチャーへ!
それでは、シェールガスのクリーンエネルギー産業への影響はどうでしょうか? 以前紹介したように、天然ガスは化石燃料の中では最もクリーンな燃料です(第3回連載:図10参照)。
そのため、今までも天然ガスはクリーンエネルギーが本格的に普及するまでの、いわばリリーフ的な存在として期待されていました。
天然ガスの価格は、基本的に需要と供給のメカニズムによって決定されます。従って、供給が100年程度確保されているということになると、よほど需要が増加しない限りは、当分の間、価格の上昇はある程度のレベルで抑えられるでしょう。
そうしますと、先の原子力発電の例と同様に、クリーンエネルギーは天然ガスとの価格競争の面で厳しい立場に立たされます。今までリリーフピッチャーと見なされていた天然ガスが、先発しかもエース候補として名乗りを上げそうな勢いなのです。
筆者は一時期、米国の某製油所で、カナダのオイルサンド(超重質油)の精製によって副産物として生産される石油コークスを利用した事業開発を担当していました。
石油コークスは、原油からガソリン・灯油・ディーゼルなど「軽い」製品を順番に精製した最後に出てくる、いわば原油の「搾りかす」なのですが、たとえ「かす」でも、熱量が高く、燃料としての価値があります。
しかし、炭素の塊であるコークスをそのまま燃やしてしまうと、CO2を多く排出する問題があります。そこで、石油コークスをガス化して、その過程でCO2を回収し、クリーンな合成ガスを製造するプロジェクトを仕込んでいました。
しかし、問題は、ガス化設備コストが高いため、投資回収するためには15年という長期にわたって、競合する天然ガスの価格より安いコストで合成ガスを製造できなければ、経済性が成り立ちませんでした。
当時は、シェールガス開発が今ほど脚光を浴びる前だったのですが、それでもシェールガスの米国天然ガスの長期価格に与える影響が未知数でリスクが高いとの判断から、投資決定を見送った経験があります。
このガス化プロジェクトは一例ですが、天然ガスは、電力の燃料になったり、自動車の燃料(天然ガス自動車)になったりしますので、その価格は、リニューアブル発電やバイオ燃料の普及に大きく影響を与えることになります。