衣508関係下肢の牽引中は腓骨神経麻痺を起こすリスクが高いので、足趾のしびれや運動障害、知覚鈍麻、灼熱感の有無を観察しなければいけません。

衣508関係下肢の牽引中は腓骨神経麻痺を起こすリスクが高いので、足趾のしびれや運動障害、知覚鈍麻、灼熱感の有無を観察しなければいけません。

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4、牽引の看護観察のポイント

牽引中の患者を看護する時には、次のことに注意して観察をするようにしましょう。

 

■正しい方向に牽引されているか

牽引している脚と重りが一直線になっていないと、正しい方向に牽引されていないことになります。正しい方向にけん引されていないと、骨折部位が整復できません。

看護師は体位交換や訪室のたびに、正しい方向に牽引されているかを観察しなければいけません。

 

■正しい体位や肢位が保たれているか

牽引中は体動が制限されています。良肢位が保たれていないと、関節拘縮を起こして、骨折の治療が終わっても、ADLが著しく低下しますし、リハビリが進みません。

また、牽引している脚が外旋していると、腓骨神経麻痺を起こしてしまいます。

 

■正しい重さで牽引できているか

牽引中はロープの長さによっては、重りが床についてしまうことがあります。重りが床についてしまうと、正しい重さで牽引できませんので、重りを吊るすロープの長さを調整して、重りが床につかないように気を付けましょう。

また、ロープが滑車から外れていたり、ベッド柵についていたり、患者の掛物がかかっていたりすると、正しい重さで牽引できていないことがありますので注意してください。

 

■疼痛の有無や程度

牽引中は様々な疼痛が発生するリスクがあります。骨折自体の疼痛のほか、過牽引による疼痛、牽引の器具に圧迫されることでの疼痛、同一体位による疼痛などがあります。

 

看護師は疼痛の有無、部位、程度などを観察して、対処する必要があります。

 

■感染兆候の有無

直達牽引を行っている場合、キルシュナー鋼線の刺入部から感染を起こすリスクがあります。

 

■神経麻痺の有無

下肢の牽引中は腓骨神経麻痺を起こすリスクが高いので、足趾のしびれや運動障害、知覚鈍麻、灼熱感の有無を観察しなければいけません。

 

出典:下肢の痛みでわかってきたこと(赤坂整形外科|2008年)

看護目標 腓骨神経麻痺を起こさない
観察項目(OP) ・牽引中の脚の向き

 

・患側の足趾のしびれや灼熱感、知覚鈍麻等の有無

・足関節の背屈ができるかの確認

ケア項目(TP) ・腓骨頭を圧迫しないように脚の向きを調整する

 

・クッション等で足の向きを調整する時は、柔らかいものを使用する

・介達牽引の時は包帯等で圧迫していないかを確認する

・2時間ごとに体位交換をする

教育項目(EP) ・足の指の感覚に違和感があれば、すぐに報告してもらうように伝える

 

■疼痛がある

牽引をしていると、骨折自体の疼痛に加えて、ピン刺入部や過牽引等による疼痛が発生します。

看護目標 疼痛が緩和されて、苦痛が軽減する
観察項目(OP) ・疼痛の部位や程度

 

・牽引の重さ

・正しく牽引されているか

・食事摂取量

・言動や表情

・睡眠状況

・ピン刺入部の感染兆候の有無

ケア項目(TP) ・医師の指示の薬剤を確実に投与する

 

・良肢位を保つ

クーリングを行う

教育項目(EP) ・疼痛増強時は我慢せずに報告してもらう

 

・レスキュー薬が使えることを伝えておく

参考文献

四肢骨折のプライマリケア ー専門医受診までにすべき事ー(福島医大医療人育成・支援センター|大谷晃司|2010年9月7日)

骨折と脱臼の基礎知識(松山赤十字病院|土川雄司|2014年12月12日)

牽引(頭蓋直達)(大学病院医療情報ネットワーク)介達牽引(大学病院医療情報ネットワーク)