衣352-4放射性水銀?!実験の時だけ?

https://www.jstage.jst.go.jp/article/radioisotopes1952/9/1/9_1_33/_pdf

はしがき
水銀およびその化合物は古くから医薬として用
いられており,さらに近年は農薬としてもその用
途がひろまっているが,反面,そのえん下,吸入
などによる中毒の発生もまた少なくない。一方,
水銀鉱山従業員とか,水銀やその塩類を使用する
工場の作業員などのように日常水銀に接触する機
会の多い職種のものの中に,職業病として水銀中
毒が発生することはよく知られているところであ
る。
このような水銀による中毒の予防および処置の
ために,生体内に侵入した水銀または水銀化合物
がどのような行動を示すかを知ることが重要であ
り,現在まで,これについて剖検結果や実験的な
研究に基づいたかなり多数の報告がみられてい
る1)-5)。けれども生体試料中の微量の水銀の定量
は必ずしも容易ではなく,その母体である有機物
の分解にあたって水銀の損失が起こったり6),試
薬中に含まれる痕跡量の水銀が定量値に影響をお
よぼしたり7),8),また,操作が複雑で多数の試料を
取り扱うのに不便であることなどが,実験上の制
約となっていたのである。放射性水銀を使用し,
その放射能計測によって水銀の体内における移動
を知り定量するようになって,実験の手段が著し
く簡単になり,多数の新しい結果が得られるに至
った9)-17)。すなわち,Adamusg)は203HgC12を家
兎に静注後,各臓器の放射能の沈着量をべータ線
計数から定め,2週間以内に腎臓に極めて多く,
排泄は尿および糞の双方をとおして行なわれると
し,加藤10,11)らは203Hg(NO3)2を静注した家兎